プロジェクトの現場

新たな製品をつくりだすために組織される、多様なスペシャリストの集団。それが、ケーヒンのプロジェクトチームだ。営業から開発・生産技術・品質管理・購買まで、工場での量産がスタートするまでに関わる全ての部門からPL(プロジェクトリーダー)が指名され、全体を統括するLPL(ラージプロジェクトリーダー)を核に、柔軟でダイナミックな一つのチームとしてミッションに挑む。

プロジェクトメンバーに選抜されたエンジニアたちの基本は、専門領域や経験の違い・性別や肩書きを超えたコミュニケーションだ。誰もが、思いついたことをその場で侃々諤々と議論することで、新たな発想の可能性や問題解決の糸口を見出していく。なぜなら、世界を、時代を本当に変えるのは、現場での自由な発想とコミュニケーションであること、そして、問題を解決するのは、一人の力ではなく、同じ目標を共有する仲間たちとの恊働=チームワークであることを確信しているからだ。世界を変えるケーヒンのチーム力は、まさにそこから生まれる。

ハイブリッド車用モーター・バッテリー制御ECU(電子制御ユニット)開発ストーリー

ホンダ車として初めてリチウムイオン電池を搭載したHEV(ハイブリッド車)シビック。テーブルを囲んでいるのは、その中核となるモーターとバッテリーを制御するECUを開発した各部門のプロジェクトリーダーたちだ。しかし、当時ほとんどのメンバーが量産製品の開発経験がなかったのだ。量産には技術力、コストや品質管理にも最高レベルのパフォーマンスが求められるため、プロジェクトは当然ながら難航した。

もっと小さく、さらに軽く!

赤 間
私がプロジェクトの統括担当者としてチームに入ったのは、2010年の4月頃。ちょうど基板の試作が終わり、そのノイズ・耐久試験が一番ホットな時期でしたね(笑)。
岸 野
そうですね。私は赤間さんより2カ月くらい前から参加していたんですが、小型化するために回路の集積度を上げた結果、外部からのノイズに弱いという問題が発生していて、回路設計の中田さんと一緒に、その解消にやっきになっていました。
中 田
回路にさまざまな周波数を流しながら、原因を一つずつ潰していくという作業でしたね。そこに時間を取られて全体スケジュールはどんどん遅れていくし、プレッシャーを感じましたね(笑)。

基板がノイズに弱くなったのは、岸野が指摘したとおり、体積にして従来のECUの約6割という小型化に起因している。しかし、それはお客さまが要求する仕様であると同時に、ケーヒンが目指す電子部品のコンセプトでもあった。これまで以上の能力を発揮しながら、もっと小さく、さらに軽いECU開発。それこそが、将来のケーヒンの商品競争力の源泉になる。コストも含めたダウンサイジングへの取組みは、その実現可能性を社内外に実証するものだった。そういうことであれば、中田としても覚悟を決めるしかなかった。「自分がやるしかない」と。

中 田
ノイズの影響を受ける部分が見つかれば、コンデンサーを追加して影響を打ち消す。それでもダメなら、回路そのものをつくりなおして影響を測定する。そんなトライ&エラーの繰り返しでした。ノイズの影響を完全に解消するのに2カ月以上かかりましたね。
赤 間
小型化・軽量化という意味では、筐体設計の髙橋さんも挑戦続きでしたよね。
髙 橋
はい。私は、基板を収納するアルミ製のケース開発を担当したんですが、仕様書どおりにつくるだけじゃ面白くないと思って(笑)。先方の担当者と擦り合わせをしながら、お客様と我々双方の利益になるよう、機能とコストダウンを両立する開発を目指しました。
岸 野
その結果が、今回製品のユニークなスタイルに結びついたわけですね。
髙 橋
そうなんです。この部分のコネクターには高い電圧がかかります。従来機は、漏電を防止するために、ケース側に絶縁シートを貼っていたんですが、私としては同じことをしたくなかった。それで、ここだけコネクターとケースの間の空間距離を長く取って、絶縁テープがなくても同等の性能が確保できるようにしたんです。
小 野
それで、絶縁テープという部品のコストが不要になるんですね。私が担当した生産技術の立場から言えば、テープを貼る工程や、そのための治具が削減できるわけですから、有効なアイデアだったと思いますよ。
佐 藤
それは、部品の原価管理を担当する購買としても嬉しいことでしたね(笑)。さらなるコストダウンは、このプロジェクトの重要な目的でしたから。